佐藤可士和のクリエイティブシンキング

 今日は「佐藤可士和のクリエイティブシンキング」を読みました。佐藤可士和さんは僕が高校の頃から尊敬しているデザイナーで、本もよく読んでいました。「佐藤可士和のクリエイティブシンキング」も読むのは三度目くらいなのですが、読んだ内容を自分なりにまとめたことがなかったので、ブログを始めたきっかけにもう一度読み返しました。

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 毎度思うのですが、可士和さんの本はとても読みやすいです。伝えたい内容が明快に書かれていて、文章も読者に伝わるようデザインしているという意思を感じます。「相手に考えを伝える」ということは、可士和さんが考えているだけではなく、一般的にコミュニケーションをする時は、誰しも考えることだと思います。しかし、私は相手に伝えることができていないと反省することが多々あります(それが今回この本を読み直すきっかけの一つなのですが)。そして私が反省する機会があるように、円滑なコミュニケーションに苦戦している人は多くいるのではないでしょうか。この本を読んで改めて、モヤモヤしている物をハッキリさせ、相手に(もしくは自分に)伝えるということの重要性を実感しました。

 

 意外に美大の中ではコミュニケーションは円滑です。皆それぞれ美意識やアイデンティティを持っていて、これが良いとか悪いとかは自信を持って意思表示しますが、同じ美術を学ぶ者同士ということで、美的感覚に対しては意見の一致が多いです。いわゆる阿吽の呼吸というやつです。

 

 しかし一歩美大の外に出てみると違います。言葉が無ければ、まったく作品を理解されないのです。これは美大生なら一度は感じることなのではないでしょうか。作品に対するプレゼンテーションは美大を離れれば離れるほど、その精度の高さが問われます。

 

 僕もそれを実感した経験があります。以前、自分の作品について大手広告代理店にてプレゼンテーションする機会がありました。作品に関しては好印象だったのですが、より深く突っ込まれると的確な意見が言えませんでした。最後には「美しいからです」とか「こういうイメージなんです」とかプレゼンでは禁物とも言える「抽象的な言葉押し」をしてしまいました。

 本の中で可士和さんは、

『単に自分が好きだから他の人も好きに違いない、というような短絡的なアプローチでは、結局押しつけになってしまいます。個人的に好きなことと、社会で共有できる価値をきちんと見極めることが大切です』

 と書かれています。これは、多くの方からすれば「当然じゃん」という感じなのだと思います。しかし、自分よりになりがちな美大生活の中で、私はそれを見落としていました。

 

 かなり個人的な話になってしまいましたが、これはいわば、私個人のクリエイティブの問題に対して、この本が答えを出してくれた解決法だと思います。おそらく次に別の問題が出てきた時にも、またこの本を読めば解決法が見いだされると思います。それほど可士和さんの考えている創造的思考法は明快で納得がいくものです。この思考法を身につけ、狙い通り相手の心を撃つ作品をつくりたいものです。